私が、アルコール依存性病棟にいた頃、個室だった。 部屋の窓から見えるのは山の鮮やかな緑だった。 あの時は、苦しかった。 血管が、みつからないので、看護師さん達が代わる代わる点滴をうちに来た。 私が、ビールで、20キロ太ったからだ。 針の山だった。 それに、普段から飲んでいる精神薬も病気ではないと、打ち切られてしまった。 2週間寝返りが打てなかった。 移動するのにも車椅子、オムツをはめていた。 朝早く起きるとかじゃなくて、夜眠れないから、ナースステイションの近くに車椅子に乗っけられて、放って置かれた事もあった。 当直の看護婦さんのご主人様の浮気話や苦労話をきいて、朝を迎えた。 また、食べ物が、飲み込めなかった。 たまたま多く食べれた時は、介護士さんが、満足気に、今日は、いつもよりも食べれた、と褒めてくれた。 薬が無いと何も出来ない私の無力さを痛感した。 そんな私を、慰めてくれたのは、山の木々である。 日が差すところもそうでないところも鮮明にみえた。 青々しく見えた。 ある患者さんは、助六が食べたくなって、お寿司屋さんに電話をかけ、配達された。 院長は、怒らなかった。 余程食べたかったのだろうと、叱らなかった。 度量が大きい院長である。 あの時は、本当に苦しかった。
11月17日