事件は通勤路で起きた。しかも帰り道。
朝の通勤時に「工事のじゅやってるな」とは思っていたけど、まさか帰りには全面通行止めになっているとは! 工事機材が道路に散らばり、いつもの道は完全封鎖。
ジジイにとってこれは死活問題や。
普段なら道なりに真っすぐ歩けば、なんとか事業所と家を行き来できる。でもちょっとでもルートを外れると、もう迷路の世界。
視界は20メートル先までが限界。それ以上はまったく見えんのや。
その日は警備員が「こっちに迂回してください」と案内してくれたんやけど、進んでいくうちに「あれ?ここどこ?」状態に。
気づけば住宅街の真ん中。静まり返って人っ子一人いない。暑さで汗はだらだら、心臓はバクバク。これ、完全に迷子ジジイやんけ。
「しゃあない、タクシー拾おう」と車通りの多い広い道路を目指して歩く。けど、こういう時に限ってタクシーなんか一台も来ない。
やっと自転車の爺さんを捕まえて道を聞いたけど、これがまた要領を得ん。「あっちの遠い交差点を右に…」なんて、そもそも見えんのじゃ!
ついに奥の手発動。ポケットのスマホを握りしめて、声を張り上げた。
「Siri!◯◯に電話!」(妻の名)
最終兵器・Siriが起動して、なんとか妻に救援要請成功。
いやはや、人生で何度も迷子になってきたけど、迷子ジジイ+視覚障害+猛暑のコンボはなかなかハードモードやった。
それでも、なんとか帰宅できたのは妻とSiriのおかげ。
ジジイしゅう、今日も命からがら生還でありました。
ありがたや、ありがたや……