「見えてるようで見えてない」って、まるでだまし絵みたいな日々が続いた。
テレビのリモコンを探すのに数分、目的のボタンを押すのも手間取る、ゴミ箱の位置を見誤ってゴミを散らかす。
こんなことが、しょっちゅうなんだ。
でも一番困るのは、他人からは“普通に見えてる”ように思われること。
「なんでそんなことも見えんの?」って顔をされると、ムッとする反面、しょうがねえなとも思う。
だって、自分でもよくわからんのだもの。見えるはずのものが、消えたり現れたりするんだから。
ある日、電車の中で知らないおばちゃんが席を譲ってくれたんだ。
「お兄さん、見えづらそうだからどうぞ」って。…いや、お兄さんじゃねえし!ってツッコみたくなったけど、ありがたく座らせてもらったー。
こういう瞬間、人のやさしさに触れるってのは、見えにくくなったからこそかもしれんな。
不便だけど、悪いことばかりじゃない。
日々の失敗も、笑い話に変わっていく。
そして今日もまた、冷蔵庫に牛乳をとるつもりがヨーグルトだった。